ネットワークスペシャリスト 午前Ⅱ 予想問題 33 問(新規出題の狙い目+午後レベル)

午前Ⅱは 25 問中 15〜17 問が過去問の再出題で、残り 8 問前後が新規問題。 新規問題の出どころは毎回ほぼ同じなので、そこに絞って作ったオリジナル問題(IPA の過去問ではない。 文言は本番と一致しない)。第 26 問からの 8 問は午後の頻出論点を四肢択一にしたもので、午前Ⅱの実際より難しい。 所要 40 分。知らない用語があった問題は、解説の表を 1 回書き写す。

出どころ問ここで扱うテーマ
(a) 直近 3〜5 年に普及した規格・サービス1〜10Wi-Fi 6/6E、WPA3 SAE、QUIC、TLS 1.3、DoH、VXLAN、EVPN、SRv6、SD-WAN
(b) 既出テーマの一段深い所11〜16BGP ルートリフレクタ・AS_PATH prepend、OSPF DR 選出、VRRP 仮想 MAC、SLAAC、PMTUD
(c) 計算問題の数字替え17〜19TCP スループット、サブネット設計、リンクアグリゲーション
(d) 支援士・応用情報からの流用20〜25DMARC、FIDO2、ゼロトラスト、MACsec、稼働率、コンテナ
(e) 午後レベル(難易度高め)26〜33経路集約とヌルルート、LSA タイプと ABR/ASBR、VRRP の復帰順序、IPsec NAT-T、STP の計算、DNS64/NAT64、MSS 書換え、PAC

本番で当たるのは、このうち 2〜4 問と見ておく。残りの新規問題は知らなくても 「消去法で 2 択まで絞る」で十分。合格基準(15/25)は再出題分だけで届く。 (e) は午前Ⅱの点数より、午後の記述で使う言葉を選択肢から拾う目的。

① 無線 LAN の新規格(Wi-Fi 6 / 6E / 7、WPA3)

11n/11ac の周波数帯は令和7年に出た(R7問15)。次に新規で出るなら 11ax の OFDMA、6GHz 帯(Wi-Fi 6E)、WPA3 の SAE の 3 点。表の右端の列を埋められるかが問われる。

第1問予想 1 / IEEE 802.11ax の多元接続

IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)で新たに採用され、1 つのチャネルのサブキャリアを複数の端末に分割して割り当てることで、複数の端末が同時に送受信できるようにした方式はどれか。
  1. CSMA/CA
  2. DSSS
  3. OFDMA
  4. TDMA
正解と解説

正解:ウ

OFDMA(直交周波数分割多元接続)が正解。11a/g/n/ac までの OFDM は、1 つのチャネルの 全サブキャリアを 1 台の端末が占有していた。11ax の OFDMA はサブキャリアを RU(リソースユニット)に 分け、複数端末に同時に割り当てる。短いパケットを大量に送る IoT 端末や高密度環境で効く。

CSMA/CA はアクセス制御(衝突回避)で全規格共通、DSSS は 11b の変調、TDMA は携帯電話(2G)の方式。

11ax のほかの新機能も一緒に: 上り MU-MIMO(11ac は下りのみ)、TWT(端末の起床時刻を予約して省電力)、 BSS カラーリング(隣接 AP の同一チャネル干渉を色で識別)、1024QAM。

規格    通称      周波数帯            最大速度   多元接続/技術            新しく入ったもの
11n     Wi-Fi 4   2.4 + 5GHz         600M       OFDM + MIMO             40MHz、MIMO
11ac    Wi-Fi 5   5GHz のみ           6.9G       OFDM + MU-MIMO(下り)    80/160MHz、256QAM
11ax    Wi-Fi 6   2.4 + 5GHz         9.6G       OFDMA + MU-MIMO(上下)   OFDMA、1024QAM、TWT、BSS カラーリング
        Wi-Fi 6E  2.4 + 5 + 6GHz    9.6G       同上                    6GHz 帯(国内は 2022 年に解禁)
11be    Wi-Fi 7   2.4 + 5 + 6GHz    46G        OFDMA + MU-MIMO         320MHz、4096QAM、MLO(複数帯域の同時利用)
11ad    WiGig     60GHz               6.8G       ―                       ミリ波・近距離

第2問予想 2 / Wi-Fi 6E の周波数帯

Wi-Fi 6E に対応した無線 LAN 機器が、従来の Wi-Fi 6 機器に加えて使用できる周波数帯と、その周波数帯で使用される無線 LAN 規格の組合せとして、適切なものはどれか。
  1. 5 GHz 帯 / IEEE 802.11ac
  2. 6 GHz 帯 / IEEE 802.11ac
  3. 60 GHz 帯 / IEEE 802.11ad
  4. 6 GHz 帯 / IEEE 802.11ax
正解と解説

正解:エ

Wi-Fi 6E の E は Extended。規格は 11ax のまま、使える周波数帯に 6GHz 帯を追加したもの。 国内では 2022 年 9 月に 5,925〜6,425MHz が解禁された。6GHz 帯は既存機器がいないので混雑が少なく、 DFS(気象レーダ回避)も不要。

11ac は 5GHz 専用で 6GHz には対応しない。60GHz は 11ad(WiGig)。 次の 11be(Wi-Fi 7)も 2.4/5/6GHz の 3 帯域で、MLO(複数帯域を同時に束ねる)と 320MHz 幅が目玉。

第3問予想 3 / WPA3-Personal の SAE

WPA3-Personal で、WPA2-PSK の事前共有鍵から直接 PMK を導出する方式に代えて採用された SAE(Simultaneous Authentication of Equals)の特徴はどれか。
  1. パスフレーズを知っていても、ハンドシェイクを盗聴しただけではオフラインの辞書攻撃ができず、セッション鍵に前方秘匿性がある。
  2. IEEE 802.1X の認証サーバ(RADIUS)を必須とし、利用者ごとに異なる認証情報で接続する。
  3. 暗号化アルゴリズムを CCMP(AES)から TKIP に変更し、古い機器との互換性を高める。
  4. 認証なしの公衆無線 LAN でも通信を暗号化できるよう、接続時に匿名の鍵交換を行う。
正解と解説

正解:ア

WPA2-PSK は、4 ウェイハンドシェイクを盗聴すればパスフレーズをオフラインで総当たりできた (PMK がパスフレーズと SSID だけから決まるため)。WPA3 の SAE(Dragonfly 鍵交換)は、 接続のたびに楕円曲線の鍵交換で PMK を作るので、盗聴データからパスフレーズを検証できず、 1 回の試行ごとに AP との対話が必要になる(オンライン攻撃しかできない)。過去のセッション鍵も漏れない(前方秘匿性)。

WPA3-Personal    SAE(Dragonfly)で PMK 生成。その後の 4 ウェイハンドシェイクと CCMP は WPA2 と同じ
WPA3-Enterprise  802.1X + RADIUS。192 ビットモード(CNSA)あり
Enhanced Open    OWE。認証なしの公衆 Wi-Fi でも暗号化(=選択肢エはこれ、WPA3 とは別物)

イは WPA3-Enterprise、ウは逆(WPA3 は TKIP を禁止)、エは OWE(Enhanced Open)の説明。

② トランスポートと Web の新しい土台(QUIC・TLS 1.3・DoH)

HTTP/2 までは出ている。次は HTTP/3=QUIC(UDP)、TLS 1.3 で何が消えたか、DoT(853) と DoH(443) の違い。いずれも「ポート番号と下位プロトコル」で切れる。

第4問予想 4 / QUIC

HTTP/3 のトランスポートプロトコルとして用いられる QUIC の特徴として、適切なものはどれか。
  1. TCP の上で動作し、TLS 1.2 以降と組み合わせて HTTP/2 の多重化を行う。
  2. UDP の上で動作し、TLS 1.3 による暗号化と鍵交換をプロトコル自体に統合している。
  3. SCTP の上で動作し、マルチホーミングによって複数の経路を同時に使用する。
  4. IP の直上で動作する独自のトランスポートプロトコルで、専用のプロトコル番号をもつ。
正解と解説

正解:イ

QUIC は UDP(443)の上に、再送・輻輳制御・多重化・暗号化(TLS 1.3)を全部自前で実装したプロトコル。 TCP+TLS では 3 ウェイハンドシェイク+TLS ハンドシェイクで 2〜3 RTT かかるところを 1 RTT(再接続は 0 RTT)で始められる。

HTTP/1.1   TCP 80 / TLS 443    1 コネクション 1 リクエスト(キープアライブで使い回し)
HTTP/2     TCP + TLS           1 コネクションで複数ストリームを多重化。ただし TCP の再送待ちで
                               全ストリームが止まる(HoL ブロッキング)
HTTP/3     QUIC(UDP 443)     ストリームごとに独立して再送するので HoL ブロッキングが起きない。
                               コネクション ID で識別するため、Wi-Fi→LTE と IP が変わっても継続

設計上の注意点として、ファイアウォールで UDP 443 を閉じていると HTTP/3 が使えず HTTP/2 にフォールバックする。 QUIC はヘッダーまで暗号化するので、中継装置からは中身がほぼ見えない。

第5問予想 5 / TLS 1.3 の変更点

TLS 1.2 と比較したときの TLS 1.3 の特徴として、適切なものはどれか。
  1. 鍵交換に RSA を用いることを必須とし、サーバ証明書の公開鍵でプリマスターシークレットを暗号化して送る。
  2. フルハンドシェイクに要する往復回数が 2 RTT から 3 RTT に増え、その分だけ安全性が高まった。
  3. 暗号利用モードとして CBC モードを標準とし、認証付き暗号(AEAD)は任意とした。
  4. 鍵交換を一時的な(EC)DHE に限定し、全てのセッションで前方秘匿性を確保した。
正解と解説

正解:エ

TLS 1.3(RFC 8446、2018 年)は「安全でない選択肢を仕様から削った」のが本質。

                    TLS 1.2                          TLS 1.3
鍵交換              RSA / DHE / ECDHE を選択         (EC)DHE のみ(RSA 鍵交換を廃止 → 常に前方秘匿性)
フルハンドシェイク  2 RTT                            1 RTT(再開時は 0 RTT も可)
暗号                CBC / RC4 / AEAD が混在          AEAD(AES-GCM, ChaCha20-Poly1305)のみ
ハッシュ            MD5 / SHA-1 も可                 SHA-256 以上
廃止                ―                                圧縮、再ネゴシエーション、静的 RSA/DH、
                                                     エクスポート暗号、DSA
証明書の送信        平文                             ServerHello 以降は暗号化(証明書も隠れる)

前方秘匿性(PFS): サーバの秘密鍵が後日漏れても、過去に記録した通信を復号できない性質。 RSA 鍵交換は秘密鍵が漏れると過去の通信も全部解けるので、1.3 で排除された。

第6問予想 6 / DNS over HTTPS

DNS over HTTPS(DoH)の説明として、適切なものはどれか。
  1. DNS の問合せと応答を TCP の 853 番ポート上の TLS で暗号化する。
  2. DNS の応答に電子署名を付け、受信側がゾーンの公開鍵で検証することで応答の改ざんを検出する。
  3. DNS の問合せと応答を HTTPS(443 番ポート)のメッセージに載せて送るため、通常の Web 通信と見分けにくい。
  4. DNS の問合せの送信元ポート番号とトランザクション ID をランダム化し、キャッシュポイズニングを困難にする。
正解と解説

正解:ウ

DoH は DNS メッセージを HTTPS の中に入れる。ポートが 443 なので Web と区別がつかず、 企業の DNS フィルタリングや監視を素通りする可能性があるのが運用上の論点。ブラウザ(Firefox・Chrome)が OS の DNS 設定を無視して DoH を使うことがある。

従来の DNS   UDP/TCP 53     平文
DoT          TCP 853        TLS で暗号化。専用ポートなので「DNS を暗号化している」と分かる(選択肢ア)
DoH          TCP 443        HTTPS に載せる。Web と見分けがつかない                        (選択肢ウ)
DNSSEC       53 のまま      署名で改ざん検出。暗号化(秘匿)はしない                        (選択肢イ)
ソースポートランダム化      キャッシュポイズニング対策(Kaminsky 攻撃対策)                  (選択肢エ)

「DoT と DoH は秘匿、DNSSEC は真正性」と役割を分けて覚える。

③ オーバーレイと WAN の新しい作り方(VXLAN・EVPN・SRv6・SD-WAN)

午後では令和に入って毎年のように出ている分野だが、午前Ⅱでの出題はまだ少ない。新規で出すなら用語の定義 1 行。VXLAN=UDP 4789・VNI 24 ビット、EVPN=MP-BGP で MAC を配る、SRv6=IPv6 拡張ヘッダーに経路を書く、SD-WAN=コントローラで回線を束ねる。

第7問予想 7 / VXLAN

VXLAN の説明として、適切なものはどれか。
  1. イーサネットフレームを UDP/IP でカプセル化してレイヤ 3 ネットワーク上に転送し、24 ビットの識別子で論理的なレイヤ 2 セグメントを区別する。
  2. IEEE 802.1Q の VLAN タグを 2 段重ねることで、事業者網の中で顧客ごとの VLAN を分離して転送する。
  3. IP パケットに MPLS ラベルを付与し、ラベルの値に基づいてコア網の中を高速に転送する。
  4. GRE ヘッダーを用いて IP パケットを別の IP パケットに包み、拠点間を仮想的に直結する。
正解と解説

正解:ア

VXLAN は「L2 over L3」の代表。サーバ仮想化で VM をラック・データセンターをまたいで移動させるには、 同じ L2 セグメントを L3 網の上に延ばす必要があり、そのために作られた。

カプセル化    外側 IP + UDP(宛先 4789) + VXLAN ヘッダー(8 バイト) + 元のイーサネットフレーム
識別子        VNI 24 ビット → 約 1,677 万セグメント(VLAN ID は 12 ビット=4,094)
終端          VTEP(スイッチまたはハイパーバイザー)。VM からはただの L2 に見える
MTU           50 バイト増えるので、下回りの MTU を 1,550 以上(通常ジャンボフレーム)にする

イは Q-in-Q(802.1ad、TPID 0x88a8)、ウは MPLS、エは GRE トンネル。GRE も L2 を運べるが 識別子を持たず、UDP でないので ECMP で分散しにくい。

第8問予想 8 / EVPN

VXLAN を用いたデータセンターネットワークにおいて、フラッディングによる MAC アドレス学習に代えて、MAC アドレスと IP アドレスの到達性情報をコントロールプレーンで VTEP 間に配布するために用いられるものはどれか。
  1. IGMP スヌーピング
  2. LLDP
  3. MP-BGP を用いた EVPN
  4. RSTP
正解と解説

正解:ウ

初期の VXLAN は、宛先 MAC が未学習のフレームを全 VTEP にマルチキャストして覚える 「フラッド&ラーン」方式だった。規模が大きくなると無駄なトラフィックが増えるので、 EVPN(Ethernet VPN)が MP-BGP の経路として「この MAC/IP はこの VTEP の配下にいる」を配る。 BGP なのでスケールし、ARP の代理応答(ARP 抑制)もできる。

「VXLAN はデータプレーン、EVPN はコントロールプレーン」の組合せで覚える。 データセンターの Spine-Leaf 構成では、アンダーレイに OSPF か eBGP、オーバーレイに EVPN、が定番。

IGMP スヌーピングはマルチキャストの転送先を絞る機能、LLDP は隣接機器情報の交換、RSTP はループ防止。

第9問予想 9 / SRv6

SRv6(Segment Routing over IPv6)の説明として、適切なものはどれか。
  1. IPv4 ヘッダーの直後に MPLS のラベルスタックを置き、ラベル配布プロトコル LDP で各ルータにラベルを配る。
  2. IPv6 の拡張ヘッダー(SRH)に、通過させたいノードや処理を表す IPv6 アドレスの並びを格納し、送信元側で経路を指定する。
  3. IPv6 パケットを IPv4 でカプセル化し、IPv4 網を越えて IPv6 拠点どうしを接続する。
  4. RSVP-TE でパスごとに帯域を予約し、中継ルータがパスの状態を保持して転送する。
正解と解説

正解:イ

SRv6 はソースルーティングの現代版。送信側(入口ルータ)がパケットに「通るべき場所のリスト」 =セグメントリストを書き込み、中継ルータはそれを見て次のセグメントへ送るだけ。 中継ルータはパスごとの状態を持たないので、RSVP-TE のような MPLS-TE よりスケールする。

SR-MPLS   セグメントを MPLS ラベルで表す(ラベルスタック)。LDP/RSVP が不要になる
SRv6      セグメントを IPv6 アドレスで表し、拡張ヘッダー SRH(Routing Header Type 4)に並べる
          IPv6 さえ通れば動く。アドレスの下位ビットに「機能」を埋め込める(End.DX4 など)

アは MPLS(LDP)、ウは 6in4 トンネル、エは MPLS-TE(RSVP-TE)。 国内キャリアのバックボーンで SRv6 採用が進んでいるので、用語として出る可能性が高い。

第10問予想 10 / SD-WAN

SD-WAN の説明として、適切なものはどれか。
  1. 拠点間を結ぶ広域イーサネットサービスで、通信事業者網の中を VLAN で論理的に分離して提供する。
  2. WAN 回線の物理的な帯域を増強するため、複数の専用線を同一経路に敷設して並列に使用する。
  3. LAN スイッチの転送テーブルを OpenFlow コントローラから書き換え、フロー単位で LAN 内の経路を制御する。
  4. 拠点ルータの設定と経路制御をコントローラで集中管理し、インターネット回線と閉域網などの複数回線をオーバーレイで束ねて、アプリケーションごとに使用する回線を選択する。
正解と解説

正解:エ

SD-WAN は「WAN を SDN の考え方で作る」。

コントローラ      全拠点のポリシーを一元設定。拠点機器はゼロタッチで展開
オーバーレイ      インターネット+閉域網(IP-VPN)+LTE などを IPsec トンネルで束ねる
回線選択          アプリ識別(Microsoft 365 はインターネット直、基幹系は閉域網)、遅延・損失を測って動的に切替
ローカルブレイクアウト  クラウド向け通信を本社経由にせず各拠点から直接インターネットへ

SD-WAN と SASE の関係: SASE はこの SD-WAN に、SWG・CASB・ZTNA・FWaaS などのセキュリティ機能を クラウド側で一体提供する枠組み。「ネットワーク+セキュリティをクラウドで」が SASE、「ネットワークだけ」が SD-WAN。

アは広域イーサネット、イは単なる回線増強、ウは LAN の SDN(OpenFlow)。

④ ルーティングと冗長化の「一段深い所」(BGP・OSPF・VRRP・LACP)

「RIP/OSPF/BGP の比較」は 5 回出たので、次に新規で出すなら各プロトコルの運用上の仕掛け。BGP ならルートリフレクタと AS_PATH prepend、OSPF なら DR 選出、VRRP なら仮想 MAC。午後で毎年問われている論点なので、午前Ⅱに降りてきてもおかしくない。

第11問予想 11 / BGP ルートリフレクタ

BGP において、同一 AS 内の iBGP ピア間をフルメッシュに接続しなくても経路情報を AS 内に行き渡らせるための仕組みはどれか。
  1. AS_PATH プリペンド
  2. ルートリフレクタ
  3. ルートダンプニング
  4. MED(MULTI_EXIT_DISC)
正解と解説

正解:イ

iBGP には「iBGP で学習した経路は他の iBGP ピアに広告しない」というループ防止の規則がある。 そのため本来は AS 内の全 BGP ルータをフルメッシュで接続する必要があり、n 台なら n(n−1)/2 本のセッションになる。

ルートリフレクタ(RR)    特定のルータを RR にし、クライアントは RR とだけ iBGP を張る。
                        RR はクライアントから受けた経路を他のクライアントへ「反射」する。
                        ループ防止に ORIGINATOR_ID / CLUSTER_LIST 属性を使う
コンフェデレーション    AS を複数のサブ AS に分割し、サブ AS 間は eBGP 風につなぐ(もう 1 つの解)

ほかの選択肢: AS_PATH プリペンドは入トラフィックの制御(次問)、ルートダンプニングは フラップする経路を一時的に抑止する機能、MED は隣接 AS に「こちらの入口を使ってほしい」と伝える属性。

第12問予想 12 / AS_PATH prepend

2 つの ISP とマルチホーム接続している AS が、特定の ISP 経由で自 AS に入ってくるトラフィックを減らしたい。BGP で一般的に用いられる方法はどれか。
  1. その ISP に広告する自 AS の経路の AS_PATH 属性に、自 AS 番号を複数回付加して経路を長く見せる。
  2. その ISP から受信した経路の LOCAL_PREF 属性を小さく設定する。
  3. その ISP との eBGP セッションのキープアライブ間隔を長くする。
  4. その ISP から受信した経路に対してルートダンプニングを設定する。
正解と解説

正解:ア

BGP の経路制御は「出る方向は自分で決められるが、入る方向は相手が決める」のが大前提。 入トラフィックを減らしたい ISP には、自 AS の経路をわざと魅力のない形で広告するしかない。 その定番が AS_PATH プリペンド(自 AS 番号を 2〜3 回重ねて AS_PATH を長くする)。

属性         方向      誰が見るか                使いどころ
LOCAL_PREF   出        自 AS 内(iBGP で配布)   自 AS から出るとき、どの ISP を使うか   ← 選択肢イは出方向
MED          入        隣接 AS(1 ホップ先だけ)  同じ隣接 AS に複数の入口があるとき。相手が無視できる
AS_PATH      入        インターネット全体        プリペンドで入トラフィックを誘導。最も確実
コミュニティ 入        相手 ISP が対応していれば  ISP が用意した値を付けると ISP 側で prepend/LOCAL_PREF 操作

BGP の経路選択順序(覚える範囲): 1. 最大 WEIGHT(Cisco 独自) → 2. 最大 LOCAL_PREF → 3. 自己生成 → 4. 最短 AS_PATH → 5. ORIGIN → 6. 最小 MED → 7. eBGP > iBGP → 8. IGP メトリック最小 …

第13問予想 13 / OSPF の DR 選出

OSPF において、イーサネットなどのマルチアクセスネットワーク上で代表ルータ(DR)が選出される規則として、適切なものはどれか。
  1. ルータプライオリティが最も小さいルータが DR になり、同じ値のときはルータ ID が最も小さいルータが DR になる。
  2. インタフェースの IP アドレスが最も大きいルータが DR になり、プライオリティは BDR の選出だけに使われる。
  3. ルータプライオリティが最も大きいルータが DR になり、同じ値のときはルータ ID が最も大きいルータが DR になる。プライオリティ 0 のルータは DR にならない。
  4. 最初に起動したルータが DR になり、より大きいプライオリティのルータが後から参加すると直ちに DR が置き換わる。
正解と解説

正解:ウ

マルチアクセス網で全ルータが互いに隣接関係(adjacency)を結ぶと n(n−1)/2 本になるので、 DR と BDR を選び、他のルータは DR/BDR とだけ LSA を交換する。

選出規則      1. ルータプライオリティ最大(既定 1、0 は候補外)
              2. 同値ならルータ ID 最大(ルータ ID はループバックの最大 IP、または明示設定)
非先取り      いったん DR が決まると、後から大きいプライオリティのルータが来ても DR は交代しない
              (DR が落ちたら BDR が昇格し、新しい BDU を選び直す)← 選択肢エが誤りな理由
マルチキャスト 全 OSPF ルータ → 224.0.0.5 (AllSPFRouters)
              DR/BDR 宛て     → 224.0.0.6 (AllDRouters)
ポイントツーポイント回線では DR/BDR を選出しない

午後で「DR になるべきルータにプライオリティを高く設定する」「DR にしたくないルータは 0 にする」の形で何度も出ている。

第14問予想 14 / VRRP の仮想 MAC アドレス

VRRP でマスタールータが故障してバックアップルータがマスターに切り替わったとき、LAN 上の端末が ARP キャッシュを更新しなくてもデフォルトゲートウェイとの通信を継続できる理由はどれか。
  1. 新しいマスターが全端末に ICMP リダイレクトを送り、デフォルトゲートウェイの IP アドレスを変更させるから。
  2. 端末が VRRP の広告パケットを受信して、マスターの実 MAC アドレスを ARP キャッシュに書き込むから。
  3. LAN スイッチが VRRP の状態を監視し、端末からのフレームの宛先 MAC アドレスを新しいマスターの MAC アドレスに書き換えるから。
  4. 仮想ルータごとに定められた仮想 MAC アドレス(00-00-5E-00-01-XX、XX は VRID)を新しいマスターが引き継ぎ、その MAC アドレスでフレームを受信するから。
正解と解説

正解:エ

VRRP では端末のデフォルトゲートウェイは仮想 IP アドレスで、端末が ARP で引くと返ってくるのは 仮想 MAC アドレス 00-00-5E-00-01-{VRID}(IPv6 は 00-00-5E-00-02-{VRID})。この MAC は その時点のマスターが使うので、マスターが代わっても端末側は何も変えなくてよい。

切替時に新マスターがやること
  1. 仮想 MAC でフレームを受け取り始める
  2. Gratuitous ARP(仮想 IP → 仮想 MAC)を送り、スイッチの MAC アドレステーブルを自ポートに書き換える
     (端末の ARP キャッシュではなく、スイッチの学習テーブルを更新するのが目的)
VRRP 広告       マスターだけが 224.0.0.18 へ IP プロトコル番号 112 で 1 秒ごと(既定)
プライオリティ  1〜254、既定 100。仮想 IP を実 IP として持つルータは 255。大きい方がマスター
Master down     広告が 3 回途切れる(約 3 秒)とバックアップが昇格。preempt は既定で有効

ア: ICMP リダイレクトは経路の案内で、ゲートウェイの切替手段ではない。 イ: 端末は VRRP 広告を解釈しない。ウ: スイッチはフレームの宛先 MAC を書き換えない。

⑤ IPv6 の運用(SLAAC・PMTUD)

IPv6 は「IPv4 と何が違うか」を 3 回落とした。移行技術と NDP は直前ドリルで扱ったので、ここでは残り 2 つの定番、アドレス自動設定の 2 方式と経路 MTU 探索。

第15問予想 15 / IPv6 の SLAAC

IPv6 のステートレスアドレス自動設定(SLAAC)の説明として、適切なものはどれか。
  1. DHCPv6 サーバがアドレスを払い出し、リース期間と割当て状況をサーバが管理する。
  2. ルータが RA(ルータ広告)で通知したプレフィックスに、ホストが自分で生成したインタフェース ID を連結してアドレスを作り、DAD で重複がないことを確認する。
  3. ホストが DHCPv6 リレーエージェント経由で他のセグメントの DHCPv6 サーバからアドレスを取得する。
  4. ホストが ARP 要求をブロードキャストして使用中のアドレスを調べ、空いているアドレスを自分に設定する。
正解と解説

正解:イ

IPv6 のアドレス設定は、RA のフラグで 3 通りに分かれる。

方式                     アドレス           DNS サーバなど      RA フラグ        サーバの状態管理
SLAAC                    RA のプレフィックス+自分で作る ID   RA の RDNSS option     M=0 O=0   なし
SLAAC + ステートレス DHCPv6  同上               DHCPv6 で取得       M=0 O=1          なし
ステートフル DHCPv6      DHCPv6 が払出し    DHCPv6 で取得       M=1              あり(IPv4 の DHCP と同じ)

インタフェース ID の作り方: MAC から EUI-64(古い)、または乱数(RFC 7217 / プライバシー拡張。今の既定)
DAD: 作ったアドレスを NS(近隣要請)で問い合わせ、NA が返らなければ使用開始(ARP ではなく ICMPv6)
デフォルトゲートウェイは DHCPv6 では配れない。常に RA の送信元(リンクローカル)

「デフォルトゲートウェイは DHCPv6 で配れない」は午後でも使う。 エは ARP と書いた時点で誤り(IPv6 に ARP はなく NDP)。

第16問予想 16 / IPv6 の経路 MTU 探索

IPv6 において、中継ルータが出力リンクの MTU より大きいパケットを受け取ったときの動作として、適切なものはどれか。
  1. パケットを破棄し、送信元に ICMPv6 の Packet Too Big メッセージでそのリンクの MTU を通知する。送信元はそれ以下の大きさに分割して再送する。
  2. ルータがパケットを出力リンクの MTU に収まる大きさに分割し、フラグメントヘッダーを付けて転送する。
  3. パケットを 1,500 オクテットごとに分割し、宛先ホストで再構築させる。
  4. パケットを破棄するだけで、送信元には何も通知しない。
正解と解説

正解:ア

IPv6 では中継ルータはフラグメントしない(IPv4 との大きな違い)。分割するのは送信元だけで、 そのために送信元は経路 MTU 探索(PMTUD)を必ず行う。

IPv4   ルータが分割できる(DF=1 なら破棄して ICMP Type 3 Code 4 "Fragmentation needed")
IPv6   ルータは分割しない。破棄して ICMPv6 Type 2 "Packet Too Big"(MTU 値つき)を返す
       送信元はその MTU でフラグメント拡張ヘッダーを付けて再送
最小 MTU   IPv4 は 576、IPv6 は 1,280 オクテット(どのリンクも 1,280 以上を保証)

運用上の落とし穴: ファイアウォールで ICMPv6 を全部止めると Packet Too Big が届かず、 大きいパケットだけが黒穴に落ちる(PMTUD ブラックホール)。「ICMPv6 Type 2 は通す」が鉄則。 IPv6 over IPv4 トンネルや VXLAN で MTU が縮む場面で起きやすい。

⑥ 計算問題の数字替え(TCP スループット・サブネット設計・リンクアグリゲーション)

令和5年で MTU(問5)・集約(問12)・VLAN タグ位置(問11)を落とした。計算は毎回 2〜3 問、必ず新しい数字で出る。式を 3 つ(スループット=ウィンドウ÷RTT、ホスト数=2^n−2、フレーム長の足し算)持っていれば対応できる。

第17問予想 17 / TCP スループットの上限

RTT が 100 ミリ秒の回線で、受信ウィンドウサイズ 65,535 オクテット(ウィンドウスケールオプションなし)の TCP コネクションを1 本使ってデータを転送する。回線帯域が十分に大きいとき、このコネクションのスループットの上限はおよそ幾らか。
  1. 約 0.66 Mビット/秒
  2. 約 5.2 Mビット/秒
  3. 約 52 Mビット/秒
  4. 約 524 Mビット/秒
正解と解説

正解:イ

TCP は ACK が返るまでウィンドウサイズ分しか送れない。つまり 1 RTT あたり最大でウィンドウ 1 個分。

スループット上限 = ウィンドウサイズ ÷ RTT
               = 65,535 バイト × 8 ビット ÷ 0.1 秒
               = 524,280 ビット/秒 ÷ 0.1
               = 5,242,800 ビット/秒 ≒ 5.2 Mビット/秒

ア 0.66 は ×8 を忘れた値(655,350 バイト/秒を「M ビット」と読み違え)
ウ 52  は RTT を 10 ミリ秒で計算した値
エ 524 は ÷0.1 を ×100 にした値

結論: 回線が 1 Gビット/秒でも、ウィンドウ 64 KB・RTT 100 ms なら 1 本の TCP は 5 Mビット/秒しか出ない。 これがウィンドウスケールオプション(RFC 7323、最大 1 GB まで拡大)が要る理由で、 海外拠点間・衛星回線・クラウド間転送の「遅い」の原因として午後にも出る。 必要ウィンドウ=帯域×RTT(帯域遅延積): 1 Gビット/秒 × 0.1 秒 = 12.5 MB。

第18問予想 18 / サブネット設計

10.0.0.0/16 を、各拠点に同じ長さのサブネットを 1 つずつ割り当てて使用する。1 拠点当たり最大 500 台のホストを収容するとき、割当て可能な拠点数が最も多くなるサブネットのプレフィックス長と、そのときの拠点数の組合せはどれか。
  1. /25、512 拠点
  2. /24、256 拠点
  3. /23、128 拠点
  4. /22、64 拠点
正解と解説

正解:ウ

手順は 2 段。「ホスト部は何ビット必要か」→「残りが拠点数」。

1. 500 台 + ネットワークアドレス + ブロードキャスト = 502 以上のアドレスが必要
   2^8 − 2 = 254   ×  足りない   (/24)
   2^9 − 2 = 510   ○  足りる     → ホスト部 9 ビット → プレフィックス長 32 − 9 = /23
2. /16 から /23 を切り出すと、サブネット部は 23 − 16 = 7 ビット → 2^7 = 128 拠点

/22 でも収容できるが 1,022 台分で無駄が多く、拠点数は 64 に減る(設問は「最も多くなる」)
/24・/25 は 500 台が入らない

設問の「最も多く」「最も少ない無駄」「最も集約範囲が狭い」は全部ぴったりの境界を聞いている。 令和5年 問12 の集約(/18)も同じで、2 のべき乗の境界を 2 進数で確かめるのが最短。

第19問予想 19 / リンクアグリゲーション

IEEE 802.1AX のリンクアグリゲーション(LACP)で 1 Gビット/秒のリンクを 2 本束ねた場合の説明として、適切なものはどれか。
  1. 1 本の TCP コネクションの転送速度も最大 2 Gビット/秒になる。
  2. 2 本のリンクは必ず異なるスイッチに接続しなければならない。
  3. フレームは 2 本のリンクに 1 つずつ交互に送信され、受信側で順序を並べ直す。
  4. 送信元・宛先の MAC アドレスや IP アドレスなどのハッシュ値でフレームを送出リンクに振り分けるため、1 つのフローは常に同じ 1 本のリンクを流れる。
正解と解説

正解:エ

リンクアグリゲーションは「フロー単位で振り分ける」。1 つの TCP フロー内でフレームの順序が入れ替わると TCP が再送してしまうので、同じフローは同じ物理リンクに固定する(ハッシュで決める)。

帯域          合計は 2 Gビット/秒だが、1 フローの上限は 1 Gビット/秒(選択肢アは誤り)
              多数のフローがあって初めて分散が効く。ハッシュが偏ると片寄る
振分けキー    送信元/宛先 MAC、IP、L4 ポートの組合せ(機器で選択)
LACP          IEEE 802.3ad → 現在は 802.1AX。LACPDU で両端が合意して束ねる。
              active(自分から送る)/ passive(相手の LACPDU を待つ)。passive 同士では束ならない
スタティック   LACP を使わず固定で束ねる。片側の設定ミスやケーブル誤接続をループとして検出できない
スイッチ跨ぎ   通常は同一スイッチ。異なるスイッチに跨ぐには スタック または MC-LAG(vPC 等)が必要(選択肢イは誤り)

ウのような「1 フレームずつ交互(ラウンドロビン)」は順序逆転を起こすので通常は使わない。

⑦ セキュリティ(支援士からの流用枠:DMARC・FIDO2・ゼロトラスト・MACsec)

セキュリティは毎回 5〜6 問で、新規問題はほぼ情報処理安全確保支援士の午前Ⅱから来る。直近 2 年の支援士で出た用語=DMARC、パスキー(FIDO2)、ゼロトラスト。NW 寄りの新規なら MACsec。

第20問予想 20 / DMARC

DMARC の説明として、適切なものはどれか。
  1. SPF と DKIM の認証結果が、メールの From ヘッダーのドメインと一致するかを受信側が確認し、不一致のときの扱い(何もしない・隔離・拒否)を送信ドメイン側が DNS で宣言する。受信側は集計レポートを送信ドメインに返す。
  2. 送信ドメインの DNS に正当な送信メールサーバの IP アドレスを登録し、受信側がエンベロープ From のドメインで照合する。
  3. 送信メールサーバがメールにディジタル署名を付け、受信側が送信ドメインの DNS から取得した公開鍵で検証する。
  4. 利用者の電子証明書を用いてメール本文を暗号化・署名し、エンドツーエンドで改ざんと盗聴を防ぐ。
正解と解説

正解:ア

SPF(選択肢イ)と DKIM(選択肢ウ)は「正当なサーバから来たか」を検証するが、 利用者に見える From ヘッダー(ヘッダー From)とは別のドメインで通ってしまう穴があった。 DMARC はその穴を塞ぐ仕組み。

アライメント  SPF の検証対象(エンベロープ From)/DKIM の署名ドメイン(d=)が、
              ヘッダー From のドメインと一致(または同一組織ドメイン)しているか
ポリシー      _dmarc.example.jp TXT "v=DMARC1; p=reject; rua=mailto:..."
              p=none(監視のみ)→ quarantine(迷惑メールへ)→ reject(受信拒否)の順に強化するのが定石
レポート      rua(集計)・ruf(失敗詳細)で、自ドメインを騙る送信の実態が分かる
2024 年〜     Gmail / Yahoo が大量送信者に DMARC 必須化。企業で導入が急増 → 出題の動機

エは S/MIME。送信ドメイン認証(SPF/DKIM/DMARC)は「サーバ間」、S/MIME は「利用者間」。

第21問予想 21 / FIDO2 / パスキー

FIDO2(WebAuthn)を用いたパスワードレス認証がフィッシング攻撃に対して強い理由として、適切なものはどれか。
  1. 認証のたびに SMS で送られるワンタイムパスワードを入力させるため、パスワードが盗まれても攻撃者はログインできないから。
  2. 利用者の生体情報をサーバに送って照合するため、攻撃者が生体情報を再現できないから。
  3. 認証器が生成した秘密鍵は端末の外に出ず、署名は登録時の Web サイトのオリジン(ドメイン)に結び付けられるため、偽サイトに対しては有効な署名が作られないから。
  4. パスワードをソルト付きハッシュとして保存するため、サーバから漏えいしても元のパスワードが分からないから。
正解と解説

正解:ウ

FIDO2 は公開鍵暗号によるチャレンジレスポンス。サーバに置くのは公開鍵だけで、秘密鍵は認証器(スマホ・PC の TPM・セキュリティキー)から出ない。

登録    認証器がサイトごとに鍵ペアを生成。公開鍵と「どのオリジン(https://example.jp)用か」をサーバに登録
認証    サーバがチャレンジを送る → ブラウザがアクセス中のオリジンを認証器に渡す
        → 認証器は そのオリジン用の秘密鍵 で署名
        偽サイト https://examp1e.jp には対応する鍵がない/オリジンが違うので署名が作れない ← フィッシング耐性の本体
生体    指紋・顔は 認証器のロック解除 に使うだけ。サーバには送らない(選択肢イは誤り)
パスキー FIDO2 の秘密鍵を Apple/Google/Microsoft のアカウント経由で端末間に同期できるようにしたもの

ア(SMS OTP)はリアルタイムフィッシング(中継型)で突破される。エはサーバ側の保存対策で、フィッシングとは無関係。

第22問予想 22 / ゼロトラスト

ゼロトラストアーキテクチャの考え方として、適切なものはどれか。
  1. 社内 LAN からのアクセスは信頼し、社外からのアクセスだけを VPN と多要素認証で保護する。
  2. ネットワーク上の位置を信頼の根拠とせず、アクセス要求のたびに利用者・端末の状態・アクセス内容を検証し、必要最小限のリソースへのアクセスだけを許可する。
  3. インターネットとの境界にファイアウォールと IPS を多段に配置し、境界の防御を強化する。
  4. 全ての通信を暗号化し、通信経路上で第三者が内容を読めないようにする。
正解と解説

正解:イ

「境界の内側=安全」を捨てるのがゼロトラスト。クラウド利用とテレワークで「内側」が消えたこと、 境界を突破された後の横展開(ラテラルムーブメント)を止められなかったことが背景。

原則(NIST SP 800-207)
  全てのリソースへのアクセスは、場所によらずセッション単位で認証・認可する
  認可は 利用者ID + 端末の健全性(EDR・OS パッチ・証明書)+ 振る舞い を動的に評価
  最小権限。アプリ単位で許可(ネットワーク全体を開ける VPN との違い)
  全通信を監視・記録し、継続的に評価

実装部品
  IdP(ID 基盤・MFA)/ ZTNA(アプリ単位の接続。VPN の置き換え)/ EDR / SWG・CASB / マイクロセグメンテーション

アは従来の境界防御そのもの、ウは境界防御の強化、エは暗号化の話で「誰に何を許すか」を決めていない。

第23問予想 23 / MACsec

IEEE 802.1AE(MACsec)の説明として、適切なものはどれか。
  1. IP パケット単位で暗号化と認証を行い、ルータを越えてエンドツーエンドで通信を保護する。
  2. TCP の上でハンドシェイクを行い、アプリケーションデータをセッション単位で暗号化する。
  3. 無線 LAN のフレームを端末とアクセスポイントの間で暗号化し、事前共有鍵または 802.1X で鍵を配布する。
  4. イーサネットフレーム単位で暗号化と完全性検証を行い、直接接続された機器の間(ホップバイホップ)で有線 LAN の盗聴・改ざんを防ぐ。鍵の合意には 802.1X の MKA を用いる。
正解と解説

正解:エ

MACsec は「有線 LAN の WPA2」。スイッチ間やスイッチと PC の間の1 リンクを L2 で暗号化する。 中継スイッチは一度復号して(VLAN タグや宛先 MAC を見て転送し)次のリンクで再暗号化するのでホップバイホップ。

層      技術        保護範囲                       主な用途
L2      MACsec      隣接機器間(1 リンク)         データセンター内・ビル間ダークファイバ・フロアスイッチ〜PC
L3      IPsec       ルータ間〜エンド間             拠点間 VPN、リモートアクセス
L4〜    TLS         アプリのセッション             Web、メール
無線    WPA2/WPA3   端末〜AP                       無線 LAN(MACsec の無線版に相当)

MACsec の鍵: 802.1X-2010 の MKA(MACsec Key Agreement)で配布。CAK(事前共有または EAP で導出)→ SAK を生成
フレーム: 宛先/送信元 MAC は平文、その後ろに SecTAG(EtherType 0x88E5)+暗号化ペイロード+ICV

アは IPsec、イは TLS、ウは WPA2/WPA3。「どの層で、どこからどこまで」で 4 つを並べて覚える。

⑧ ネットワーク以外の枠(稼働率計算・コンテナ)

最後の 3〜4 問はシステム構成・開発・サービスマネジメントから。令和5年は FaaS(問23)とメモリインタリーブ(問22)。計算なら直列・並列の稼働率、用語ならコンテナが最有力。

第24問予想 24 / 稼働率の計算

稼働率 0.9 の装置 A を 2 台並列に接続したシステムと、稼働率 0.99 の回線 B を直列に接続した。システム全体の稼働率はおよそ幾らか。ここで、並列部分はどちらか 1 台が稼働していればよいものとする。
  1. 0.81
  2. 0.891
  3. 0.9801
  4. 0.99
正解と解説

正解:ウ

並列(どちらか動けばよい)  1 − (1 − 0.9) × (1 − 0.9) = 1 − 0.01 = 0.99
直列(両方動く必要がある)  0.99 × 0.99 = 0.9801                     → ウ

ア 0.81  = 0.9 × 0.9(並列を直列と勘違い)
イ 0.891 = 0.9 × 0.99(A を 1 台で計算)
エ 0.99  = 回線 B を忘れた、または並列部分だけ

式は 2 つだけ。直列=掛ける、並列=「全部止まる確率」を 1 から引く。 ネットワークでは「冗長化した FW ペア → 単一の回線 → 冗長化したサーバ」のような直並列混在で出る。 一番弱い直列要素(ここでは回線 0.99)がボトルネックになる、という読み方もできる。

第25問予想 25 / コンテナ型仮想化

コンテナ型仮想化の特徴として、適切なものはどれか。
  1. ホスト OS のカーネルを共有し、アプリケーションとその依存ライブラリだけをまとめて隔離実行するので、ゲスト OS を持つ仮想マシンより起動が速く、リソース消費が少ない。
  2. ハイパーバイザーの上にゲスト OS を動作させるので、ホストと異なる OS カーネル(Windows 上の Linux など)を同時に実行できる。
  3. CPU やメモリなどのハードウェアをソフトウェアで完全にエミュレーションするので、異なる CPU アーキテクチャ向けのプログラムを実行できる。
  4. OS のない状態でハードウェア上に直接アプリケーションを配置するので、OS の脆弱性の影響を受けない。
正解と解説

正解:ア

                 仮想マシン(ハイパーバイザー型)        コンテナ
隔離の単位       ハードウェア → ゲスト OS ごと            プロセス(名前空間・cgroups)
カーネル         VM ごとに別                             ホストと共有(Linux コンテナは Linux カーネル上)
起動             分〜数十秒(OS ブート)                 秒以下
イメージ         GB 単位                                 MB 単位。Dockerfile で再現可能
隔離の強さ       強い                                    弱め(カーネルの脆弱性で突破されうる)
運用             vSphere, Hyper-V, KVM                   Docker + Kubernetes(オーケストレーション)

イは仮想マシンの説明で、コンテナはホストと同じカーネルしか使えない(Windows で Linux コンテナを動かす Docker Desktop は、 裏で Linux VM を 1 つ動かしている)。ウはエミュレータ(QEMU など)、エはベアメタルの誤った説明。

ネットワーク視点の論点: コンテナは IP が頻繁に変わるので、Kubernetes の Service(仮想 IP)や サービスメッシュ(サイドカーで mTLS)が出てくる。午後で CNI・Service・Ingress が出たら、この図に戻る。

⑨ 午後レベル(難易度高め:午後の頻出論点を午前形式で)

午後Ⅰ・Ⅱで令和 3〜7 年に繰り返し問われた論点を四肢択一にしたもの。午前Ⅱの実際の難易度より高い。経路集約とヌルルート・ABR/ASBR と LSA タイプ・VRRP の復帰順序・IPsec の NAT 越え・STP の計算・DNS64/NAT64・MSS 書換え・PAC。午後の記述で使う言葉をそのまま選択肢にしてある。

第26問予想 26 / 経路集約とヌルルート

ルータ R は配下に 10.1.0.0/24 と 10.1.1.0/24 の 2 つのサブネットをもち、上流ルータには集約した 10.1.0.0/22 を広告している。R にはデフォルトルートが上流ルータ向けに設定されている。このとき R に「10.1.0.0/22 の宛先を Null0 インタフェースへ向ける経路」(ヌルルート)を設定する目的はどれか。
  1. 集約範囲内で未使用のアドレス(10.1.2.0/24 など)宛てのパケットが、デフォルトルートで上流ルータへ戻され、上流ルータの集約経路で再び R へ送られてループするのを防ぐ。
  2. 集約経路のメトリックを最小にして、上流ルータに他の経路より優先して選択させる。
  3. 配下の 2 つのサブネットへの経路が両方消えたときに、集約経路の広告を自動的に止める。
  4. 未使用アドレス宛てのパケットに対して ICMP 到達不能を返さないようにし、ネットワーク構成を外部から推測されにくくする。
正解と解説

正解:ア

令和3年 午後Ⅰ問2 と令和7年 午後Ⅱ問1 で問われた、集約とセットで必ず出る論点。

10.1.2.5 宛てのパケットが上流から R に届く(上流は /22 の集約しか知らない)
  ヌルルートなし  R の経路表: 10.1.0.0/24, 10.1.1.0/24, 0.0.0.0/0 → 上流
                 → 10.1.2.5 はデフォルトに一致 → 上流へ → 上流は /22 で R へ → … TTL が尽きるまでループ
  ヌルルートあり  R の経路表に 10.1.0.0/22 → Null0 を追加
                 → 10.1.2.5 は /22 (Null0) が /0 より長一致 → 破棄(ICMP 到達不能を返す)
                 → 10.1.0.5 は /24 が /22 より長一致 → 正常に転送(ヌルルートの影響なし)

多くの実装では集約経路を設定すると Null0 経路が自動生成される(BGP の aggregate、OSPF の area range など)。 記述で問われたら「集約範囲内の存在しない宛先へのパケットが、デフォルトルートによって上流との間でループするのを防ぐため」。 ウは条件付き広告の話で別機能。エは副次的効果にすぎない。

第27問予想 27 / OSPF の LSA タイプと ABR/ASBR

OSPF でマルチエリア構成を採用している。エリア 1 内のルータが、エリア 2 に属するネットワークへの経路と、OSPF 外(静的経路や BGP から再配布した経路)への経路を学習するために受け取る LSA の種類と、それを生成するルータの組合せとして、適切なものはどれか。
  1. エリア 2 の経路:Type 1(ルータ LSA)をエリア 2 の各ルータが生成 / OSPF 外の経路:Type 2(ネットワーク LSA)を DR が生成
  2. エリア 2 の経路:Type 3(ネットワーク集約 LSA)を ABR が生成 / OSPF 外の経路:Type 5(AS 外部 LSA)を ASBR が生成
  3. エリア 2 の経路:Type 5(AS 外部 LSA)を ABR が生成 / OSPF 外の経路:Type 3(ネットワーク集約 LSA)を ASBR が生成
  4. エリア 2 の経路:Type 2(ネットワーク LSA)を DR が生成 / OSPF 外の経路:Type 7(NSSA 外部 LSA)を ABR が生成
正解と解説

正解:イ

令和3年 午後Ⅰ問2・令和6年 午後Ⅰ問2 の論点。「誰が、どの範囲に、何を流すか」を表で持つ。

Type  名称                  生成するルータ          流れる範囲        中身
1     ルータ LSA            全ルータ                エリア内          自分のリンクとコスト
2     ネットワーク LSA      DR                      エリア内          そのセグメントに接続するルータ一覧
3     ネットワーク集約 LSA  ABR                     他エリアへ        他エリアのプレフィックス(距離ベクトル的に要約)
4     ASBR 集約 LSA         ABR                     他エリアへ        ASBR の所在
5     AS 外部 LSA           ASBR                    全エリア(スタブ除く) 再配布した外部経路
7     NSSA 外部 LSA         NSSA 内の ASBR          NSSA 内           ABR が Type 5 に変換して外へ出す

ABR   = 複数エリアに属するルータ(必ずバックボーン エリア 0 に接する)
ASBR  = 外部経路を再配布するルータ(静的経路・BGP・RIP など)
スタブエリア         Type 5 を入れない。代わりに ABR がデフォルトルートを Type 3 で流す
トータリースタブ     Type 3 も入れない(デフォルトルートだけ)
NSSA                 スタブだがエリア内に ASBR を置ける(Type 7)

午後では「ABR で経路集約(area range)するとエリア間の LSA 数が減り、エリア内の障害が他エリアの SPF 再計算を起こさなくなる」まで書けると満点。

第28問予想 28 / VRRP の復帰と経路収束

2 台のレイヤ 3 スイッチ L3SW1(VRRP プライオリティ 120)と L3SW2(同 100)で VRRP を構成し、上流とは OSPF で接続している。L3SW1 が再起動して復旧したとき、OSPF の経路情報が収束する前に L3SW1 が VRRP マスターに戻ると、一時的に通信断が発生する。これを防ぐための対策として、最も適切なものはどれか。
  1. L3SW1 と L3SW2 の VRRP 広告の送信間隔を短くして、切替えに要する時間を短縮する。
  2. OSPF の Hello 間隔と Dead 間隔を短くして、隣接関係の確立を早める。
  3. L3SW1 のプリエンプト(マスターへの自動復帰)を一定時間遅らせる、又は上流経路の存在をトラッキング条件にして、経路が収束してからマスターに戻るようにする。
  4. L3SW1 のプライオリティを 100 に下げ、L3SW2 と同じ値にする。
正解と解説

正解:ウ

令和5年 午後Ⅱ問1・令和7年 午後Ⅰ問1 で問われた。

何が起きるか
  L3SW1 が起動 → VRRP は数秒で立ち上がる(プライオリティ 120 > 100 なので即マスターに復帰)
  → 端末のデフォルト GW 宛てトラフィックは L3SW1 へ
  → しかし OSPF の隣接確立・LSDB 同期・SPF 計算はまだ(数十秒)→ L3SW1 の経路表に上流経路がない
  → パケットは捨てられる(ブラックホール)

対策
  preempt delay      マスターへの復帰を N 秒(OSPF 収束より長く)遅らせる
  トラッキング       上流インタフェース or 特定経路の存在を条件にプライオリティを増減。
                     経路がなければプライオリティを 120 → 90 に下げ、L3SW2 がマスターのまま
  preempt 無効       復帰しても自動では戻らない(手動で戻す運用)

ア・イは切替えを速くする話で、順序の問題は解決しない。エは同値にすると IP アドレスの大きい方がマスターになるだけで、 やはり経路収束前に取り得る。記述なら「OSPF の経路が収束する前に L3SW1 がマスターになり、上流への経路を持たないままパケットを受け取って破棄するから」。

第29問予想 29 / IPsec の NAT 越え

拠点のルータがインターネット側で NAT(IP マスカレード)の配下にある構成で、本社との間に IPsec VPN(ESP、トンネルモード)を構築する。この構成で IPsec 通信を成立させるために用いられる仕組みはどれか。
  1. ESP の代わりに AH を用いて、IP ヘッダーを含めて認証する。
  2. ESP をトランスポートモードに変更して、内側の IP ヘッダーを NAT で書き換えられるようにする。
  3. IKE を TCP で行い、NAT のセッションテーブルに登録されるようにする。
  4. IKE のネゴシエーションで経路上の NAT を検出し、ESP パケットを UDP(4500 番ポート)でカプセル化して送る。
正解と解説

正解:エ

ESP(IP プロトコル番号 50)にはポート番号がないので、複数端末を 1 つのグローバル IP に多重化する NAPT は ESP を通せない(どの内側ホスト宛てか区別できない)。解決策が NAT トラバーサル(NAT-T、RFC 3948)。

IKE(UDP 500)     NAT-D ペイロードで、自分の IP:ポートのハッシュを交換 → 途中で書き換わっていれば NAT ありと判定
NAT あり          以後の IKE と ESP を UDP 4500 に載せる(ESP in UDP)。NAT は UDP のポートで多重化できる
キープアライブ    NAT のテーブルが消えないように、定期的に空の UDP 4500 を送る

AH が NAT を越えられない理由: AH は IP ヘッダー(送信元 IP)まで含めて認証するので、NAT で書き換わると検証に失敗
ESP トンネルモードは外側 IP だけ書き換わるので、UDP に包めば中身は無傷

ファイアウォールの許可ルールは「UDP 500、UDP 4500、(NAT がない場合)ESP」の 3 つ。午後で穴埋めになる。

第30問予想 30 / STP のポート役割

3 台のスイッチ SW1・SW2・SW3 が互いに 1 Gビット/秒のリンクで三角形に接続され、スパニングツリー(IEEE 802.1D)が動作している。ブリッジプライオリティは SW1 が 4096、SW2 が 8192、SW3 が 32768 で、MAC アドレスは SW1 < SW2 < SW3 の順に小さい。全リンクのパスコストが等しいとき、ブロッキング状態(フレームを転送しない)になるポートはどれか。
  1. SW1 の SW2 側のポート
  2. SW2 の SW3 側のポート
  3. SW3 の SW2 側のポート
  4. SW3 の SW1 側のポート
正解と解説

正解:ウ

手順は 3 段。「ルートブリッジ」→「各スイッチのルートポート」→「各リンクの指定ポート」。残ったポートがブロッキング。

1. ルートブリッジ     ブリッジ ID(プライオリティ+MAC)が最小 → SW1(4096)
                      ルートブリッジの全ポートは指定ポート(転送)
2. ルートポート       各スイッチで、ルートへのパスコストが最小のポート(1 台に 1 つ)
                      SW2: 直接 SW1 へ(コスト 4)  vs  SW3 経由(8) → SW1 側
                      SW3: 直接 SW1 へ(コスト 4)  vs  SW2 経由(8) → SW1 側
3. 指定ポート         各リンクで 1 つ。SW2-SW3 間のリンク:
                      両者のルートパスコストは 4 で同じ → ブリッジ ID が小さい SW2 側が指定ポート
4. 残り              SW3 の SW2 側 = ルートポートでも指定ポートでもない → ブロッキング(RSTP では代替ポート)

結果: SW3 → SW2 の通信は SW1 を経由する。設計では「ルートにしたいコアスイッチのプライオリティを最小(0 や 4096)にし、 セカンダリを次に小さく設定する」。既定値 32768 のまま放置すると MAC アドレスの小さい古い機器がルートになる、が午後の定番の指摘。 パスコスト: 10M=100、100M=19、1G=4、10G=2(802.1D-1998 の短い値)。

第31問予想 31 / DNS64 / NAT64

IPv6 アドレスしかもたない端末から、A レコード(IPv4 アドレス)しか登録されていない www.example.jp へ HTTP でアクセスできるようにする。そのために用いる DNS64 と NAT64 の動作の説明として、適切なものはどれか。
  1. DNS64 は、AAAA レコードが存在しない名前の問合せに対して、A レコードの IPv4 アドレスを NAT64 用プレフィックス(64:ff9b::/96 など)に埋め込んだ AAAA 応答を合成して返す。端末がそのアドレス宛てに送ったパケットを NAT64 が IPv4 に変換してサーバへ転送する。
  2. DNS64 は端末からの問合せを IPv4 で受け直して A レコードを取得し、NAT64 は端末の IPv6 パケットを IPv4 ヘッダーでカプセル化してサーバへトンネルする。
  3. DNS64 は端末に IPv4 アドレスを DHCP で払い出し、NAT64 は端末が IPv4 と IPv6 の両方で通信できるようにデュアルスタック化する。
  4. DNS64 は A レコードを AAAA レコードに書き換えて権威 DNS サーバに登録し、NAT64 はサーバ側に IPv6 アドレスを付与する。
正解と解説

正解:ア

平成25年 問9・弱点補強で落とした「トランスレーション」の具体例。DNS64 と NAT64 は必ずセット。

1. 端末 → DNS64:  www.example.jp の AAAA は?
2. DNS64 → 権威:  AAAA なし。A = 203.0.113.10 を取得
3. DNS64 → 端末:  AAAA = 64:ff9b::203.0.113.10(= 64:ff9b::cb00:710a)を合成して返す
4. 端末 → NAT64:  宛先 64:ff9b::cb00:710a の IPv6 パケット
5. NAT64:         プレフィックス 64:ff9b::/96 を剥がして IPv4 203.0.113.10 宛てに変換(送信元は NAT64 の IPv4 プール)
   戻りは逆変換。ステートフル NAT(NAPT)なので IPv4 側からは始められない

限界: アプリが IPv4 アドレスを直接書いている(IP リテラル)と DNS64 を通らず失敗 → 端末側に CLAT を置く 464XLAT で補う
      DNSSEC 検証している端末は合成 AAAA を偽物と判定する

イはトンネル(6in4 の逆)の話で、トランスレーションではない。ウ・エは仕組みとして存在しない。 携帯キャリア網(IPv6 シングルスタック化)で実際に使われているので、出題の動機がある。

第32問予想 32 / トンネルと MSS 書換え

拠点間を IPsec トンネル(ESP、トンネルモード)で接続したところ、ping や小さな Web ページの表示は正常だが、大きなファイルの転送が途中で止まる。経路上のファイアウォールが ICMP を全て遮断しており、設定変更はできない。拠点ルータで行う対策として、最も適切なものはどれか。
  1. トンネルインタフェースの MTU を 1,500 オクテットに設定し、IPsec のオーバヘッド分を吸収する。
  2. トンネルを通過する TCP の SYN セグメントの MSS オプションを、トンネルのオーバヘッドを差し引いた値(例: 1,360 オクテット)に書き換える。
  3. ESP を AH に変更して、暗号化によるオーバヘッドをなくす。
  4. TCP のウィンドウサイズを小さくして、一度に送るデータ量を減らす。
正解と解説

正解:イ

症状は典型的な PMTUD ブラックホール。原因と対策を分けて書けるようにする。

原因
  IPsec トンネルは 1 パケットあたり 50〜70 オクテット増える(新 IP 20 + ESP ヘッダー・IV・トレーラ・ICV)
  端末は MTU 1,500 で DF ビット付きの 1,500 オクテットのパケットを送る
  ルータは分割できず破棄し ICMP Type 3 Code 4(要分割)を返す
  → ファイアウォールが ICMP を落とす → 端末は MTU を下げられず再送を繰り返す
  小さいパケット(ping、短い HTTP)は 1,500 未満なので通る ← 「大きいものだけ止まる」の理由

対策(ICMP を通せない前提)
  MSS クランプ   ルータが TCP SYN の MSS オプションを書き換える(例: 1,360)。
                 両端のホストは「相手の MSS」と信じて小さいセグメントを送るので、分割も ICMP も不要
                 TCP にしか効かない(UDP の大きなパケットは別途対処)
  端末の MTU を下げる   全端末の設定変更が必要で現実的でない

アは逆効果(トンネルの実効 MTU はもともと 1,500 未満)。ウは AH でもヘッダーは増え、暗号化もされない。 エはウィンドウとセグメント長は別物。記述なら「ルータで TCP SYN の MSS 値を書き換え、トンネルのオーバヘッドを含めても MTU を超えない大きさのセグメントを送らせる」。

第33問予想 33 / PAC によるプロキシ自動設定

社内の PC から、社内サーバ宛てはプロキシを経由せずに直接接続し、インターネット宛てはプロキシサーバ経由で接続させたい。このために PAC(Proxy Auto-Config)ファイルを用いる場合の説明として、適切なものはどれか。
  1. PAC ファイルはプロキシサーバ上に置かれ、プロキシサーバが受信した要求の宛先に応じて直接接続とプロキシ経由を切り替える。
  2. PAC ファイルは DNS サーバに登録され、名前解決の際に社内の名前には実 IP アドレス、社外の名前にはプロキシの IP アドレスを返す。
  3. PAC ファイルはレイヤ 3 スイッチに配置され、宛先 IP アドレスが社内のものでなければパケットをプロキシへ透過的に転送する。
  4. PAC ファイルは JavaScript の関数(FindProxyForURL)で記述され、Web ブラウザが要求ごとに URL とホスト名を引数にこの関数を評価し、返り値(DIRECT 又は PROXY host:port)に従って接続先を決める。
正解と解説

正解:エ

令和5年 午後Ⅱ問1・令和6年 午後Ⅰ問3 で問われた。PAC はブラウザ(クライアント)側で動く、が全て。

PAC の例
  function FindProxyForURL(url, host) {
    if (isPlainHostName(host) || dnsDomainIs(host, ".example.co.jp")) return "DIRECT";
    if (isInNet(dnsResolve(host), "10.0.0.0", "255.0.0.0"))           return "DIRECT";
    return "PROXY proxy.example.co.jp:8080; DIRECT";   // プロキシが落ちていたら直接
  }

配布方法
  手動          ブラウザに PAC の URL(http://proxy.example.co.jp/proxy.pac)を設定。グループポリシーで配る
  WPAD(自動検出) DHCP オプション 252 で URL を通知、または DNS で wpad.<ドメイン> を引かせて http://wpad.../wpad.dat を取る
                 → 偽の wpad ホストを立てられると全通信を奪われる(WPAD の既知のリスク。社内 DNS に wpad を予約しておく)

落とし穴
  dnsResolve() をたくさん書くと要求ごとに名前解決が走り遅い
  PAC の配布サーバが落ちると、ブラウザは既定で直接接続に落ちる(プロキシ必須の環境では外に出られなくなる)

ア〜ウは PAC の置き場所が全部違う。ウは透過プロキシ(WCCP など)の説明で、PAC は不要になる方式。